福昌寺|竣工から2年

竣工から2年が経過した節目に、建物の使われ方や経年変化を確認するため「福昌寺 客殿・庫裡」に訪れました。

1. 大きな不具合なく、丁寧な使いこなし
大きな不具合は見られず、日々の維持管理が行き届いていました。
なかでも印象的だったのは、庫裡を含む各スペースが、ご家族によって愛着をもって丁寧に使われていたことです。

2. 客殿の感想と「モノづくりはコトづくり」
副住職のお話では、「木の香りに迎えられ、高窓からやわらかな光が差し込む客殿が、檀家さんにも好評です」とのことでした。
私の設計理念でもある「モノづくりはコトづくり」という視点では、単に物理的な空間をつくるだけでなく、そこに生まれる体験や気づきを大切にしています。
年月をかけて使いこなされることで、「空間」が「居場所」へと育っていく——そんな変化が、静かに根づいているのを感じました。

3. 庫裡と客殿の距離感:寺院設計の難しさ
寺院建築における難しさの一つは、生活の場(庫裡)と法要の場(客殿・本堂)の距離感にあります。
近すぎれば、静謐さを求める法要空間に日常の音や動きが影響しかねず、遠すぎれば、祭事時の移動や準備が煩雑になります。
福昌寺では、設計段階からお施主さまと綿密に協議を重ね、動線や視線への配慮を丁寧に行いました。
今回の点検でも、その工夫が運用面でしっかりと機能しているとの声をいただきました。

4. 回遊性ある間取りの運用評価
客殿を中心とした回遊性のある間取りにより、受付から事務室、調理室、倉庫といったバックヤードへの移動がスムーズに行える構成になっています。
実際の法要や行事の際も、複数人が同時に動いても交錯しにくく、準備や後片付けが効率的に進められているとの声をいただきました。
こうした運用面での評価は、竣工時には見えにくい部分ですが、実際に使われる中でこそ、初めて見えてくる大切なポイントです。

客殿玄関
広縁
枯山水に植栽が増えていました
裏庭に園芸コーナーができていました
秋月建築研究室  - A . A . L a b