渋川クリニックの竣工1年検査を行いました。
建物は、時間の経過とともに少しずつ馴染んでいきます。
そのため季節が一巡した時期に実際の使われ方や納まりの状態を確認することがあります。
たとえば木部は、竣工直後には含水率が高く、膨張した状態にあります。
建具職人はその後の収縮を見越して、あらかじめ余裕を持たせた寸法で製作することがありますが、その影響で梅雨時期には引戸のすべりが重く感じられる場合があります。
この段階で単純に削ってしまうと、将来的な収縮に対応できなくなるため、長期的な状態を見据えながら慎重に調整を行う必要があります。
こうした判断は、その場の使いやすさだけでなく、時間の経過による変化を前提とした対応が求められます。設計者が引渡し後も継続して関わることで、設計時の意図や前提条件を踏まえた上で、適切なバランスを見極めることが可能になります。
実際の運用の中で生まれる変化や使われ方も、建築の一部と捉えています。
今回の訪問では、クライアントから印象的なお話を伺いました。屋外に設置した自販機が、地域の方が立ち寄るきっかけとなり、学校帰りの子どもたちが飲み物を買いに来る場所にもなっているとのことでした。
このクリニックは「まちなかクリニック」という考え方をもとに計画しています。
通院という行為を日常の延長に位置づけることで、心理的な距離を和らげることを意図したものです。
今回のお話は、その考え方が実際の使われ方の中に現れ、地域との緩やかな関係として育ちつつある一例だと感じました。
建物は完成時点で完結するものではなく、使われ続ける中で少しずつ形を変えていきます。
その過程に継続して関わることも含めて、設計の役割の一部であると考えています。
「まちなかクリニック」については、プロジェクトページでも触れています。
